福谷充輝のホームページ

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論文が採択されました (Comparison of the relative muscle volume of triceps surae among sprinters, runners, and untrained participants)

Physiological Reportsに投稿していた論文が採択されました。

Comparison of the relative muscle volume of triceps surae among sprinters, runners, and untrained participants

Atsuki Fukutani, Yume Tsuruhara, Yuto Miyake, Kenji Takao, Hiromasa Ueno, Mitsuo Otsuka, Tadashi Suga, Masafumi Terada, Akinori Nagano, Tadao Isaka

この研究は、立命館大学の伊坂研で取り組んでいる、アスリートの筋形状計測プロジェクトの一貫で取得したデータを活用し、やや変化球的な視点ではありますが、論文を執筆させていただきました。私が行ったこととしては、ふくらはぎ (腓腹筋とヒラメ筋から構成される下腿三頭筋) の筋体積を計測し、下腿三頭筋の筋体積に対する腓腹筋、ヒラメ筋の体積比率算出になります。なぜこのようなことをしたかというと、私達がバイオメカニクス的に詳細な研究を行うときに、下腿三頭筋の発揮した力だけでなく、下腿三頭筋を構成する腓腹筋、ヒラメ筋が発揮した力を識別したいときが多くあります。しかしながら、下腿三頭筋の力 (足関節底屈トルク) は計測できる一方で、腓腹筋、ヒラメ筋が発揮した力を計測することは、外科手術を行って身体内部にセンサーを埋め込まない限り出来ません。これは現実的には実施不可能ですので、何らかの方法で “推定” していくことになります。その時、筋力は、筋サイズ (体積、断面積) に強く関連するということで、例えば、下腿三頭筋の筋力が100で、腓腹筋が体積の80%を占め、ヒラメ筋が体積の20%を占めるのであれば、腓腹筋が発揮した力は80でヒラメ筋が発揮した力は20というふうに、体積比率から筋力を振り分けることが出来ると考えられています。実際に、この考え方はバイオメカニクス分野で広く使われています。しかしながら、この方法を行うときには筋体積を計測する必要があり、筋体積を計測するためにはMRIという大型の医療機器を使う必要があり、簡単に行うことは出来ません。そのため、多くの研究が、過去にMRIを使って筋体積を測った研究の値を参照 (引用) して推定を行っています。この推定は、必然的に、「全ての被験者間で腓腹筋、ヒラメ筋の体積比率は同一」という大前提のもとに行われています。言い換えれば、もし仮に被験者間で体積比率が異なるのであれば、上記の方法で推定して得られた知見は間違った値になっており、再検討が必要になります。経験的にも、腓腹筋とヒラメ筋の大きさの比率が全ての人で同じと考えている人は少ないかと思いますし、速筋は遅筋よりも筋肥大しやすいため、トレーニングをしている人は速筋寄りの腓腹筋が占める比率が大きくなっているのではないかと考えられます。このことを念頭に置き、スプリンターやエンデュランスランナー、一般人の下腿三頭筋の筋体積比率を比較したところ、予想通り、筋体積比率には差があり、個人値でみれば、比率が10%以上違うケースもありました。これを踏まえて上記の推定を行うと、腓腹筋の推定発揮筋力が450Nもしくは700Nといった大きな開きが出てしまいました。過去の先行研究は、これを例えば2人とも550Nといった同じ値と考えてその後の詳細な分析をしていたことになります。これらのことを踏まえ、本研究によって、「個々の値を実測」することの重要さを提案出来たかと考えています。

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Atsuki Fukutani Ph.D.
(Sport Sciences)

Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University, Assistant professor

1-1-1 Noji-higashi, Kusatsu, Shiga, 525-8577, Japan

info@skeletalmuscle.net

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