論文が採択されました (The stretch-shortening cycle effect is prominent in the inhibited force state)
Journal of Biomechanicsに投稿していた論文が採択されました。
The stretch-shortening cycle effect is prominent in the inhibited force state
Atsuki Fukutani, Walter Herzog
この研究は、反動動作による筋力増強、stretch-shortening cycle (SSC)に関するもので、
SSC効果の程度を、①通常の状態、②筋疲労を模した状態、の2条件で比較しました。
近年、SSCが生じる理由の一つとして、筋細胞の中にあるタイチンという構造の影響が提唱されています。
これは、SSCにおける反動動作局面 (伸張性収縮局面) においてタイチンの構造が変わり、
タイチンが引き伸ばされた時に生じる力 (受動張力) がSSC効果に貢献しているという考え方です。
この考え方が正しいのであれば、筋が疲労した時、つまりクロスブリッジの働きが抑制されたときであっても、
筋細胞の構造であるタイチンの働きは大きく変化しないと考えられるため、
(特にタイチン由来の) SSC効果は筋疲労時もある程度維持されるのではないかと仮説を立て実験を行いました。
その結果、当初の予想通り、人工的に明らかな筋疲労状態を作った時においても
SSC効果はある程度保たれました。
もし仮にSSC効果が全てクロスブリッジ由来のものであれば、
SSC効果は筋疲労時には減弱すると思われますので、そうはならなかったという本研究結果は、
前提条件である「SSC効果は全てクロスブリッジ由来」が間違いである、
つまり、タイチンもSSC効果に貢献していると推察されます。
この研究は、SSC効果のメカニズムを明らかにするために行った、基礎研究に近いものですが、
この研究で得られた結果は、
「筋疲労時のようなクロスブリッジの働きが減弱したときにこそSSCを活用する意義がある」
ことを示唆しており、
応用的な学問であるスポーツ科学においても重要な知見になると期待しています。