論文が採択されました (Energy Cost of Force Production After a Stretch-Shortening Cycle in Skinned Muscle Fibres: Does Muscle Efficiency Increase?)
Frontiers in Physiologyに投稿していた論文が採択されました。
Energy Cost of Force Production After a Stretch-Shortening Cycle in Skinned Muscle Fibres: Does Muscle Efficiency Increase?
Venus Joumaa, Atsuki Fukutani, Walter Herzog
この研究は、カナダ、カルガリー大学のVenus Joumaaという方が行った実験です。
現在、私がメインで行っている単一の筋細胞を抽出した力学計測実験 (skinned fiber実験) は、
このVenus Joumaaという方に教えて頂きました。
この実験のアドバンテージの一つは、
筋の収縮中・弛緩中に消費したATPの量を定量出来るということです。
この手法を用いて、以前、residual force enhancement
(クロスブリッジではなくタイチンによって発揮筋力が増強すると考えられている) という現象は、
発揮筋力が大きくなるにも関わらずATPの消費はそこまで変化しない、
つまり、(ATP消費を伴う) クロスブリッジ以外の要素、
すなわちタイチンによって発揮筋力が増大しているのではないかと提唱されています。
この流れで、residual force enhancement (伸張性収縮後の等尺性収縮筋力増強) が関わっているであろう、
stretch-shortening cycle (伸張性収縮後の短縮性収縮筋力増強) も、
ATP消費の大きな増大を伴うことなく (つまりクロスブリッジ以外の要素で)
発揮筋力増大が起こるのではないかと仮説を立てて実験を行なわれました。
結果的には、思ったほどのATP効率 (一定の発揮筋力に対するATP消費) 向上は
観察されませんでした。
本研究の限界、今後の課題としては、
ATP消費量計測の時間分解能が高くないため、
stretch-shortening cycleにおけるもっとも重要な局面である
streth局面、およびshortening局面でのATP消費が計測できておらず、
shorteningが終わった後の等尺性収縮局面でのATP消費量計測になってしまっていることが挙げられますので、
今後は、難易度は遥かに高くなりますが、
時間分解能の高い手法でstretchおよびshortening局面でのATP消費量をおさえたいと考えています。