福谷充輝のホームページ

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筋力アップ目的と筋肥大目的のトレーニング

トレーニングのテキストブックをみると、
多くの本で筋力アップ目的のトレーニングと、筋肥大目的のトレーニングが記載されています。
これら2つが分けて記載されているということは、
テキストブックの中では明言されていないかもしれませんが、
【筋力アップ目的のトレーニングと筋肥大目的のトレーニングは異なる】
【筋力アップ目的のトレーニングと筋肥大目的のトレーニングは別々に行う必要がある】
ということになるかと思います。
そこで、筋力と筋肥大 (筋サイズ) の関係を考えてみたいと思います。

筋力は、筋が発揮した力ですので、
筋肉が筋力に関連していると考えることは当然だと思います。
これは高校の生物の授業でも習うかと思いますが、
筋力を発揮する、つまり筋を収縮させるためには、
ミオシンフィラメントという糸状のものから突き出たクロスブリッジが、
アクチンフィラメントを手繰り寄せる必要があります。
この時、ミオシンフィラメントの位置は変わりませんが、
アクチンフィラメントが手繰り寄せられることで、
サルコメアと呼ばれる部分の長さが短くなります。
筋とは、このサルコメアが直列、もしくは並列にたくさん並んだものですので、
サルコメアが短くなれば筋も短くなる、つまり筋が収縮する、となります。
これが筋力発揮の源となります。

次に、この筋力を大きくする方法を考えたいと思います。
サルコメアの収縮が筋の収縮ですので、
力強く筋を収縮させるためには、力強くサルコメアを収縮させれば良い、ということになります。
それでは、力強くサルコメアを収縮させる (力強くアクチンフィラメントを手繰り寄せる)
ためにはどうしたらよいかというと、一番先に考えられるのは、
アクチンフィラメントを手繰り寄せるクロスブリッジの数を増やすことです。
ただし、これは私の知っている範囲では出来ません。
それでは次に、一個のクロスブリッジが発揮できる力を大きくする、
ということですが、これは “一定” というわけではないのですが、
基本的に5-10nNあたりの範囲で一定、と仮定して頂ければと思います。
つまり、クロスブリッジの数や、1個のクロスブリッジが発揮できる力を
変化させることは難しいので
仮にAさんとBさんからそれぞれ一個のサルコメアを取り出してきて、
それぞれの筋力を計測すると基本的に同じになります。

それでは、どこで筋力の差がでてくるのか?という話になるかと思いますが、
それは筋のサイズ (サルコメアの数) になります。
サルコメアが短縮することで腱を引っ張り、
最終的に骨が動く、つまり身体運動が生じるということになりますので、
筋力を大きくするためには、いかに強く腱を引っ張るかが重要になります。
この時、腱を多数のサルコメアで引っ張れば、力強く腱を引っ張ることが出来ます。
これは、綱引きの時に、たくさんの人間で引っ張ったほうが強く引けるということと同じです。
ただし、(等尺性収縮時の筋力と考えた場合)、
サルコメアが縦に (直列に) 繋がってしまうと筋力が加算されないので、
筋力を大きくするためには、サルコメアが横に (並列に) 繋がる必要があります。
これがサルコメア数と筋力の関係になります。

(仮に、サルコメアが全て並列方向に増える、という前提をおくと)
そうなると、
仮に筋が10%大きくなると、筋力も10%大きくなる、という計算になります。
つまり、筋力と筋肥大は極めて強い関連があります。
(基本的に同じように変化するはずです)。

ただし、例外もあり、例えば10個の筋肉を持っていても、
神経系が、「8個だけしか収縮出来ない程度の司令しか筋肉に送らない」となると、
筋サイズ (並列に並んだサルコメア数) が同じでも、発揮できる筋力は変わってしまいます。
上記の場合であれば、10個中、2個が休んだままだからです。
そういう意味では、【筋肥大目的ではなく筋力アップ目的 (神経系のトレーニング)】の
トレーニングも存在しうるかと思いますが、
仮に神経系が、10個の筋を全て使えるような刺激を送れるのであれば、
それ以上、神経系要因で筋力がアップすることはないので、
特に鍛えれば鍛えるほど、【筋力アップ=筋肥大】に近づいていくと思います。

このように筋力と筋サイズは極めて強く関連しますので、
基本的に筋肥大を求めていけば、筋力は向上するし、
筋力を上げるためには、筋を肥大させていくことになります。
厳密に言えば、【 (サルコメアの数は同じだけれども) 筋内の水分量の変化によって
筋サイズが変化した】とかであれば、当然、上記の筋力と筋サイズの関連は崩れていきます。
ただし、これはかなり特殊な状況下ですので、
基本的には筋力アップは、筋サイズのアップと似てくるのかと考えています。
このようなことも有り、【神経系のトレーニング】とは、
種々の筋、運動単位を動員するタイミングや程度を、
自身が改善しようと考えている動作に望ましいものに近づけていく、
という感じに近いのかなと思います。

写真

Atsuki Fukutani Ph.D.
(Sport Sciences)

Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University, Assistant professor

1-1-1 Noji-higashi, Kusatsu, Shiga, 525-8577, Japan

info@skeletalmuscle.net

Copyright © Atsuki Fukutani
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