福谷充輝のホームページ

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股関節内転筋の股関節伸展作用

今日は機能解剖学に関するトピックを紹介したいと思います。

股関節内転筋は、その名の通り、股関節を内転する (股関節を内側に閉じる) 作用を持っています。
これは、どの機能解剖のテキストにも書いてあり、私もそれを信じて疑わない作用です。

ただ、私が昔から思っていたのは、
股関節内転という動作は、日常生活ではほとんど使われない動作ということです。
例えば、今、みなさんが立って股関節を外に開いた状態から閉じるとき、
つまり股関節内転をする時、内転筋に力を入れなくても足の重さで自然に股関節が内転していきます。
つまり、このような状態では股関節内転筋を収縮させる必要がありません。

このようなあまり日常生活に使われない股関節内転動作ですので、
股関節内転に貢献する股関節内転筋群はそんなに発達している必要がない、
そんなに大きくない筋な気がしますが、
実際にMRIで股関節内転筋群を見てみると、
股関節内転筋群は非常に大きいことがわかります。
感覚的にはハムストリングスと同程度の大きさというイメージです。

そんなに需要がない股関節内転動作を担当する股関節内転筋群が
とても需要がある股関節伸展・膝関節屈曲を担当するハムストリングスと同程度の大きさというのは、
直感的には奇妙な結果です。

そうなると、【股関節内転筋にはそれ以外の作用があるのではないか?】
という疑問が湧いてきます。

股関節内転筋群は恥骨 (骨盤の下) についています。
この付着部 (筋の走行) と股関節の回転軸の位置関係で、
股関節内転筋群がどのような作用を持つかが決まります。
股関節内転筋群の走行は股関節の回転軸から下の方にあるため、
股関節内転筋群が収縮する (短くなる) と股関節が内転する、という流れです。

この点に関しては全く異論はないのですが、もう少し筋の走行を詳しくみていくと、
仮に今、股関節を屈曲 (もしくは骨盤を前傾) させると、恥骨と筋の走行の位置関係が少し変わります。
大腿骨に対して恥骨が後ろの方にいきますので、
筋の走行が股関節の回転軸よりも後ろを通るのであれば、
股関節内転筋群は股関節内転だけでなく股関節伸展にも貢献するようになります。
これは知らなかった方もいるのではないかと思います。

そうなると、股関節伸展動作は日常動作やスポーツ動作問わず、頻繁に用いられる動作ですので、
股関節内転筋群が大きい、肥大しているのも理解出来ます。

このように、筋の作用というものは、回転軸と筋の走行の位置関係で決まってきますので、
姿勢、関節角度によっては機能が変わることもあります。
その一例として、【股関節内転筋群は股関節伸展に貢献しうる】ということを
紹介出来ればと思いました。

ただし、次回は、やや混乱させてしまうかもしれませんが、
【本当に股関節内転筋群は股関節伸展に貢献するのか?】
という、私が持っている疑問を紹介したいと思います。

 

写真

Atsuki Fukutani Ph.D.
(Sport Sciences)

Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University, Assistant professor

1-1-1 Noji-higashi, Kusatsu, Shiga, 525-8577, Japan

info@skeletalmuscle.net

Copyright © Atsuki Fukutani
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