福谷充輝のホームページ

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PNFストレッチによる柔軟性改善効果

前回、柔軟性について私の考えを紹介しましたので、
今回も柔軟性に関連するトピックにしたいと思います。

柔軟性を向上させるためにストレッチを行っている人は多いと思います。
このストレッチは、筋肉を伸ばすことでより筋肉が伸びやすくなる、
つまり関節可動域を大きくすることを目標として行っている人が多いかと思います。

現在、もっとも普及しているストレッチは、
反動をつけず、筋肉をジワーッとゆっくり伸ばしていくストレッチである、
スタティックストレッチかと思いますが、実は他にも何個か方法があります。
たとえば、ある程度反動をつけながら行うダイナミックストレッチというものもありますし、
少し専門的になりますが、神経と筋の繋がりを考慮して行うPNFストレッチというものもあります。
今回は、このPNFストレッチについて私の考えを紹介したいと思います。

PNFストレッチのPNFはProprioceptive Neuromuscular Facilitationの省略であり、
proprioceptive = 固有受容器、neuromuscular = 神経-筋、facilitation = 促通、
つまり、固有受容器を活用して神経と筋の繋がりを促通し、それをストレッチに活かす、
という考え方だと解釈しています。

PNFストレッチとは、単純に筋を伸ばすのではなくて、まず一度、目的とする筋を “収縮” させ、
収縮をやめた後、リラックした後に筋を伸ばすと、いつもより伸ばしやすい、というものです。
筋を伸ばす前に収縮させる理由としては、筋収縮によってゴルジ腱器官という固有受容器が刺激され、
そうすると筋が壊れないように筋を強制的にリラックスさせるような反応が出ますので、
この筋が強制的にリラックスしている時にストレッチを行えば、普通にストレッチするよりも
筋をしっかり伸ばせることが挙げられます。
これがPNFストレッチは通常のストレッチよりも効果が大きい理由と考えられています。

これを聞くと、「それならPNFストレッチがベスト!」、という考えになり、
実際、私がパーソナルトレーナーとして働いていたときには
このPNFストレッチを多用していました。
そんな経験もある中、大学院で筋、神経の勉強をしていた時にふと思ったことがあります。
それは、
「PNFストレッチが効果的なのは筋のリラックスを促すことが理由だが、本当に筋をリラックスさせる必要があるのか?」
ということです。

これはどういうことかというと、
「PNFストレッチでは、ゴルジ腱器官の助けをかりて、普通にストレッチするよりも筋をリラックスさせている、と考えられているが、
逆に言えば、普通にストレッチするときには、筋は完全にリラックス出来ていないのか?
もし仮に、普通にストレッチした時でも筋が100%リラックス出来ているのであれば、
PNFストレッチをしてリラックスを促通しても、リラックス度100%が100%になるだけで意味が無いんじゃないか?」
ということです。
もし普通にストレッチを行った時に、収縮させたくないのに筋がどうしても収縮してしまう、
というのであれば、理屈的にはPNFストレッチが効果がありそうです。
一方で、普通にストレッチしたときも筋が十分リラックスできているのであれば、
PNFに限らず “リラックスを促通させる” という手段は必要ないと思います。
つまり、まず証明すべきは、
「通常のストレッチ時に、筋は (多少なりとも) 興奮・収縮しているのかどうか?」
ということだと考えていて、これが無い限りはPNFストレッチで効果が出る理由が説明できないと考えています。
この点は、PNFストレッチを何回も行ってきた人間としては、
是非とも答えが知りたいところであり、特にPNFストレッチをしたことがあって、
私と同様の興味を持って解明してくれる人がいればと思っています。

なお、PNFはPNFストレッチだけではなく、リズミックイニシエーションや対角螺旋といった、
他にも様々なテクニックや考えがあり、これらは神経と筋の連動が上手くいかないような人の
リハビリテーションとして考え出されたものであり、
コンセプトとしては非常に面白いので、興味ある人は是非、PNFに関する本を読んでみて下さい。

写真

Atsuki Fukutani Ph.D.
(Sport Sciences)

Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University, Assistant professor

1-1-1 Noji-higashi, Kusatsu, Shiga, 525-8577, Japan

info@skeletalmuscle.net

Copyright © Atsuki Fukutani
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