29th International Society of Biomechanicsで研究発表をしました
29th International Society of Biomechanicsで、
Direct measurements of tendon length changes during stretch-shortening cycles in rat
という内容で研究発表を行いました。
この研究は、stretch-shortening cycle、反動動作による筋力増強をテーマとした研究です。
現在、反動動作による筋力増強が引き起こされるメカニズムとして、
腱の伸び縮みが挙げられています。
これは多くのスポーツ科学のテキストブックでも紹介されていますので、
広く普及されているものといえます。
しかしながら、特にヒト生体を対象とした研究では、
腱の長さを直接的に計測することが困難ですので、
いくつかの前提条件が成り立つと仮定した上で腱の長さ変化を推定しているのが現状です。
そこで本研究は、ヒトではなくラットではありますが、
腱の長さ変化を直接的に精度良く測った上で、
反動動作による筋力増強と腱の関係を調べました。
その結果、反動動作による筋力増強が確実に引き起こされている時と、
反動動作を用いていない時とで腱の長さ変化パターンに有意な違いは認められませんでした。
真実としては、上記2条件間で腱の長さ変化が “同一” とは考えにくいですが、
少なくとも統計的に違いが認められるような大きな違いはありませんでした。
(腱の長さはおおよそ20mm程度であり、
条件間で0.2-0.4mm (腱長の1-2%) という違いはなかったという解釈です)
ですので、腱の長さ変化で反動動作による筋力増強を説明することは困難
(腱以外の要素が貢献している) という結論となっています。
学会参加者からの指摘もあった通り、
この結果はラットのふくらはぎ (ヒラメ筋+アキレス腱) を対象として得られたものであり、
ヒト生体のふくらはぎ (下腿三頭筋+アキレス腱) で同じ結果が出るかと言われれば、
そこは慎重になる必要がありますが (筋断面積や腱の長さといった形状の違いを考慮すべきなので)、
まずは腱の長さ変化を反動動作中に実測で捉えたことに意義があると考えています。
意外ではあるのですが、
腱の研究は数え切れないぐらいたくさんあるにも関わらず、
本研究のように長さを直接的に計測した研究は極めて限られていますので、
この手法を使って新しい実験にも取り組んでいます。
また、もしこの手法を使って出来る面白い研究アイデアがあれば、
ぜひ一緒に研究を進めさせて頂ければと思っているので、
お気軽にご連絡頂ければありがたいです。
なお、この学会は私にとって4年ぶりの、対面での国際学会となりました。
私がカナダのカルガリーでポスドクをしていた時のボスである先生ともかなり話をすることができ、
対面・国際学会の良さを再確認することが出来ました。
また、やはりしっかり研究を行っている人は、
教員となってからも自分自身で研究を続け、学会での発表も継続している、
ということも再確認しました。
学会発表のように人前で研究発表をするということは、
質疑の矢面に立つということであり、(少なくとも私にとっては) 大変なことですので、
自分に甘くなってしまうと研究発表を避けがちになってしまうのですが、
(正直私も、大学院生時代と比べて学会発表のペースが落ちていました・・・)
そこを耐えて研究発表をしている人は、
やはりレベルアップしていっている印象を強く感じましたので、
自分もそこはしっかりくらいついていけるよう、
学会発表も頑張っていこうと思いました。