論文が採択されました (Residual force depression is affected by muscle length)
Scientific Reportsに投稿していた論文が採択されました。
Residual force depression is affected by muscle length
Atsuki Fukutani, Tadao Isaka
筋が発揮出来る力は、筋の長さに依存します【力-長さ関係】。
そのため、例えば等尺性収縮を同じ筋の長さで行うと、発揮できる力は同じになります。
ただ、例外も存在し、等尺性収縮の時の筋の長さは同じでも、
等尺性収縮の前に短縮性収縮を行ったときは、通常の等尺性収縮時と比較して力が小さくなります。
この【短縮性収縮によるその後の等尺性筋力の低下】をresidual force depressionと呼びます。
本研究は、この現象が、筋が長いときと短いときで変化するかを検証しました。
その結果、筋が長いときのほうがresidual force depressionの影響が大きいという知見が得られました。
この現象の筋力への影響は大きく、
例えば今回の実験条件では10-20%の筋力低下が生じていますので、
この現象を無視してしまうと結果の解釈を見誤る危険性があります。
しかしながら、この現象を見落としている研究はかなりあるように思います。
例えば、非常に多く行われているバイオデックスで短縮性筋力測定を行うとき、
“短縮性収縮を開始する関節角度” をしっかり規定しないと、
上記現象により測定結果が変わってしまう可能性があります。
(私の知る限り、一般的なバイオデックスでの短縮性筋力測定は、
測定開始時はマシンがブランブラン揺れている状態であるため、
短縮性収縮開始時の関節角度の正確な規定が出来ず、
そういう事もあって私は特殊なモードを使っています)
この問題が、例えばトレーニング実験の前後で短縮性筋力を測定・比較するときに生じてしまうと、
解釈に致命的な問題が生じる可能性があります。
これは筋に由来する現象ですので、当然ヒト生体の実験でも影響があります。
このresidual force depressionに関して、ヒト生体で実験を行ってみたい方は、
実験アイデアが何個かありますので、是非、ご連絡を頂ければと思います。