福谷充輝のホームページ

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鍛えている筋を意識することの重要性

今回は、筋力トレーニングの勉強をする時によく耳にする、
「今、鍛えている筋肉を意識する」ということを考えてみたいと思います。

これは、例えばスクワットをやって下半身を鍛えているときに、
何も意識せずにやるよりも、鍛えている下半身の筋肉を意識して行ったほうが
トレーニング効果が高くなる、ということを意味しているのかと思います。

これだけ聞くと、たしかにそんな感じがしますし、
逆に足の筋肉のことを一切考えずにスクワットで追い込んでいる人は
おそらくいないと思います。

ただ、
「それでは、同じトレーニングをしていても、
筋肉を意識するかしないかで、トレーニング効果が変わるのか?」
といわれると、少し疑問が湧いてきます。

例えば、今、同じ重さで10回のダンベルカールを
①筋肉 (上腕二頭筋) を “意識しながら” 行う時
②筋肉 (上腕二頭筋)を “極力意識しないように” 行う時
とで、効果が異なってくるのでしょうか?
個人的には、違いは出ないような気がします。
なぜならば、意識の有無によらず、
“同じ負荷が筋肉にかかっていれば”、
筋肉への刺激、トレーニング効果も同じになると考えられるからです。
もちろん、しっかり意識したときと意識していないときとで
使用重量や反復回数などが変わってくれば話は別で、
負荷が異なると当然トレーニング効果も異なると思います。

これに少し似た話で、”マッスルコントロール” というものがあります。
これは学術的な用語ではありませんが、
トレーニング業界では常識ともいえるくらいよく耳にする言葉で、
「自分の好きなタイミングで筋肉の収縮をコントロールする」
といった内容かと思います。

ボディビル競技のポージングの時 (特定の筋肉を収縮させたい時) などに
よく使われているような気がします。
このようなことは、もちろん可能だと思いますし、
椅子に座ってパソコンをしている今の私でも、
胸の筋肉を収縮させることは出来ます。

ただし、私が疑問に思っているのは、
例えばベンチプレスのトレーニングを行う時に、
「大胸筋ではなく上腕三頭筋をメインに鍛えたい」、
デッドリフトを行う時に、
「脊柱起立筋ではなくハムストリングスをメインに鍛えたい」、
と考えた時、
“フォームや扱う重量を変えずに、意識を変えるだけで”、
鍛える場所を変えることが出来るのかどうか?ということです。

これは、特にトレーニング上級者の方であれば、
経験的には「出来る!」と感じている方もおられるかと思いますが、
私の知る限り、研究的 (実験的) にこれをうまく実証しているものはないと思います。
仮に、特定の動作を達成する時に、意識するだけで使う筋肉を変えるという技術を
確立することが出来れば、それは非常に有用な技術だと思います。
例えば、肉離れをした際、特定の動作をする時に、
肉離れをした筋肉はほとんど動かさず、その他の筋肉で動作を代償出来る可能性があります。
ですので、この “マッスルコントロール” が出来ることを証明できれば、
それは非常に有意義な研究だと思います。

ただ、マッスルコントロールといった “意識の有無” による現象を実験的に検証する時に難しいのは、
“本当に意識していたかどうか?” を確認することが極めて難しいということです。
「先程の動作中に、あなたは本当にこの筋肉を意識していましたか?」
と聞いて確認するぐらいしか方法がなく、
客観的に確認することは残念ながら不可能だと思います。

このように難しい (もしかすると不可能!?) とはわかっているのですが、
トレーニング愛好家の一人としては非常に興味あるトピックですので、
「”マッスルコントロール” が実際に出来るのか?出来ないのか?」は
(仮に検証結果が「マッスルコントロールは出来ない、都市伝説だった」でも構わないので)
是非、だれかに検証してほしいと思っています。 

写真

Atsuki Fukutani Ph.D.
(Sport Sciences)

Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University, Assistant professor

1-1-1 Noji-higashi, Kusatsu, Shiga, 525-8577, Japan

info@skeletalmuscle.net

Copyright © Atsuki Fukutani
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