福谷充輝のホームページ

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柔軟性を決める要因

今日は、私が興味のある、「柔軟性」についての疑問を紹介したいと思います。
柔軟性は、競技スポーツをする時だけでなく、
一般的な日常生活動作にも必要となる時があります。
例えば、両足を揃えて立った状態から、両足のカカトを地面につけたまま、
膝を曲げていって座るような姿勢をとろうとすると、
柔軟性がない人は、おそらくカカトが地面から浮くか、
後ろにコケるかのどちらかになると思います。
というのも、私が実際にそうなるので良く分かります。

これはおそらく、足首 (下腿三頭筋) が固いため、
スネを前に倒していくこと (足関節背屈) が出来ないことが原因の一つとして考えられます。

そうなると、「筋肉 (下腿三頭筋) が硬い」ということが、
柔軟性が低いことの主要因と考えるのが自然だと思います。
ただし、下腿三頭筋の下にはアキレス腱がついています。
このアキレス腱が伸びれば伸びるほど、下腿三頭筋を伸ばした時のように
スネを前に倒していくこと (足関節背屈) が出来るため、
下腿三頭筋に加えてアキレス腱の硬さも柔軟性に関わっていると考えられます。

これはおそらく、広く一般的に受け入れられている考え方だと思いますし、
「下腿三頭筋とアキレス腱の硬さは柔軟性に影響を与える」
ということであれば、疑いの余地なく私も賛成なのですが、
「下腿三頭筋とアキレス腱の硬さが柔軟性に “決定的な影響” を持つ」
ということになると、少し違う見方を持っています。

具体的に言うと、私は、
「筋と腱の長さの比率」
が柔軟性に強く関連しているのではないかと考えています。

例えば、「足関節をどれだけ背屈させられるか?」ということを考えると、
先程も紹介したように下腿三頭筋、もしくはアキレス腱をどれだけ伸ばせるかが勝負ですので、
これらが柔らかいほうが柔軟性が高いのは間違いないと考えています。

ただし、ここで考えたいことの一つとして、「筋と腱では、明らかに腱が硬い」ということです。
安静時の筋と腱の硬さは10倍レベルで違い、腱が硬いといわれています。
今、硬いコンクリートと柔らかいゴムが直列に繋がったものを想像していただき、
それを引き伸ばした時にどちらが伸びるかを考えていただくと、
みなさん、間違いなくゴムが伸びると考えると思います。
それは、ゴムがコンクリートよりも柔らかいからです。

これと同じで、筋と腱が直列に連なったものを伸ばした時、
すなわちストレッチした時に伸びる部分は筋だと思います。
これを踏まえると、

「筋+腱」の長さは同じ、それぞれの硬さも同じだけれども、
①筋の長さが全体の90%、腱の長さが全体の10%
②筋の長さが全体の10%、腱の長さが全体の90%

の人がストレッチをすると、どちらがより伸ばせる (柔軟性が高い) でしょうか。
私の予想は①です。なぜならば、腱よりもはるかに柔らかい筋が占める割合が大きく、
伸ばせる部分がたくさんあるからです。

これは、私が以前からずっと考えていたことで、
ふくらはぎの筋肉がふくらはぎの上のほうにちょっとだけあって、
それより下はほとんどアキレス腱という人を見かけたときには、
何気なく足首のストレッチをしてもらったことがあって、
私の記憶が正しければ、おそらくすべての人が柔軟性が高くない、
という結果になっていたかと思います。

今、「柔軟性に (程度の大小は問わず) 影響を与える要因は? 」
と聞かれれば、モーメントアームや筋断面積、腱断面積などを自信をもって挙げることが出来ますが、
「それではこれらが柔軟性にどの程度影響を与えているのか?」
と聞かれると、正直、答えることが出来ません (一応、個人的な予想はあります)。
こういうことは細かいことかもしれませんが、
仮に今、柔軟性を向上させようと考えた場合、
「柔軟性に大きな影響を与えている要因」からアプローチすることが効率的であるため、
(ただし、”その要因がトレーニング等で変わりうるものなのか?” も把握する必要があります)
私はトレーニングにもダイレクトに役に立つ知識だと思っています。

現在は時間的制約もあり、取り組むことは出来ていないのですが、
もし「柔軟性を決定する要因を包括的に検証したい!」という方がいれば、
将来的には是非取り組みたいと考えています。
ストレッチ

 

写真

Atsuki Fukutani Ph.D.
(Sport Sciences)

Faculty of Sport and Health Science, Ritsumeikan University, Assistant professor

1-1-1 Noji-higashi, Kusatsu, Shiga, 525-8577, Japan

info@skeletalmuscle.net

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